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冷蔵庫

一人の傷ついたボクサーが激闘を終えて、二人のスタッフに左右から脇を抱えられて、我が家のリングを降りていった。

母と私はスタンディングオベーションでその後ろ姿に拍手をおくった。

先日、25年使った実家の冷蔵庫を買い替えた。筋肉質の男の人と、そうでない細い男の人が来て、古い冷蔵庫を持っていった。

小さい頃から、「ただいまー」と家に帰ってきては、真っ先に冷蔵庫に向かったものだ。おやつが入っていれば喜び、入ってなければがっかりし、それを365日繰り返しながら大人になった。壁からどかした冷蔵庫の背中には、黒い大きな汚れシミが影のように染み付いて、25年間、人知れず休むことなく働いていたんだなと感じた。

光が差し込む扉の方へ向かって、作業員二人に担ぎ出される朽ち果てた冷蔵庫は、まるで激闘を終えたボクサーのようだった。

そして新しい冷蔵庫が来た。その名もベジータ。

すっごい強そうなのが来た。

end

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