正月三ヶ日
今年の三ヶ日は、空気まで新しく入れ替わったようにすっきり晴れた。仏様にお供えする花に、蝋梅と松と葉牡丹そして千両を使った。生けた時は蕾だった蝋梅の花がポツポツと黄色い花を咲かせ、読経中も香りが漂ってくるようになった。あまりにいい香りだから、母に「これすごくいい香りだから匂ってみて」というと「なつかしい香り」と言った。少し分けて自分の部屋に持っていき、前を通るたびに鼻を近づける。
お寺の行事は、31日に除夜の鐘つきをして、年が明けて1日に元旦の法要をした。うちはお参りの少ない寺で、今年も除夜の鐘は15回で終わった。あまりに少ないから私がこっそり追加で15回打っておいた。翌日の元旦の法要は近所のジイちゃん、バアちゃんが5人ほど神社の帰りに寄ってくれた。その前で「みんな死ぬぞ」という法話をした。話をしながら、この人たちはここに来る前「今年も健康で長生きできますように・・・」と神社でお願いしてきたのだろう。その人たちに「みんな死ぬぞ」と話をしているのだから、そりゃお参りも少なくなるはずだと思って、可笑しかった。
近所を歩くと、会う人は皆、新年の挨拶だけはしっかりしようという雰囲気で、手を止め足を止め、直立して「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」と言ってくださるものだから、私も直立して「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」と答えているのだけれど、何が”めでたい”のかイマイチわかってない。
2日の午後に、近所のおばちゃんが庭から取ってきた蝋梅を持ってきてくれた。「これいい香りよ。匂ってみて」というので、私は初めて匂うようなふりをして、ゆっくり吸い込み「僕の好きな香り」と答えた。そのおばちゃんが言うには、一番いい香りの花は蝋梅で、一番臭い花はマリーゴールドだという。渋い顔をさらに渋くして、「マリーゴールドは本当に臭いのよ。本当にあの臭いだけは私はダメ〜、あ、でも無農薬で野菜を作るときにはいいのよ。畑の作物の間に植えてたら、虫も少なくなるなるから。虫もこの臭いが嫌いなのよね〜」と話していた。私の頭の中には、「麦わらの〜帽子の君がゆれたマリーゴールドに似てる〜」とあいみょんの曲が流れていた。ゆれたマリーゴールドはよほど臭いのではないだろうか。今度、あいみょん好きの女子がマリーゴールドと言ってたら「あれ、くっせーんだぜ」と言ってみようとおもった。きっと嫌われる。
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