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モノノミトナル

 1968年公開の映画に「暴力脱獄」があります。これは、酒瓶片手にパーキングメーターを壊した罪で刑務所に入れられた主人公ルークが脱獄を試みる物語です。

 ルークの入れられた刑務所はクセの強い囚人ばかりでしたが、彼の不思議な明るさと、聡明さ、何より決して弱音を吐かない根性に、皆惹かれていきました。そんな彼が一度だけ弱音を吐いたことがありました。

 看守Aが脱獄に失敗したルークに罰として穴を掘れと命じます。ルークはその命令に従い一生懸命に穴を掘りますが、人が1人入れるほどの穴を掘り終えた頃に、別の看守Bがやってきて危ないから穴を埋めろと命令します。ルークはその命令にしたがい掘った穴を埋めますが、埋め終わるころ、穴を掘れと命令した看守Aが戻ってきて、穴が掘れてないことに激怒し再び穴を掘らせます。ルークは再度穴を掘りますが、また掘り終わる頃に、穴を埋めろと命令した看守Bが戻ってきて、穴が埋められてないことに激怒し、穴を埋めろと命令します。掘ったり埋めたりを数回くり返したころに、あれほど強気だったルークが大声をあげて助けを求めます。埋める穴を掘らねばならい。掘らねばならない穴を埋めねばならない。そんな無意味さがルークを失望に陥れたのだろうと思います。人間が一番耐えられないことは「無意味さ」かもしれません。

 私たちの人生も何も持たずに生まれてきて、何ももたずに死んでいくといわれますが、この命に何の意味があるのでしょうか。

 浄土真宗で大事にしている仏さまを阿弥陀仏と申します。阿弥陀仏は、私の前に念仏の声となって現れ、この命に、お浄土へ生まれて仏になるというこの上ない意味を与えてくださいます。

 親鸞聖人は、そのところを阿弥陀仏の光明(真実明)に「モノノミ(実)トナル」と説明を添えられて教えてくださっていらっしゃいます。

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