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捨てられないカレンダー

ただ浄土の一門のみありて、情をもって願いいて趣入すべし。

安楽集

3年ほど前に父が往生し、空いた部屋を私が使うことになりました。あるものを残して、すべての荷物は自分のものと入れ替えました。そのあるものとは、カレンダーです。父が亡くなった令和2年9月のカレンダーがそのまま吊るしてあります。私はなかなかそのカレンダーが捨てられず、たまにそれを眺めては、この日までは父は生きていたんだと思ったりします。

友達が私の部屋に遊びにきた時、令和2年9月のカレンダーを不思議そうに見ていましたので事情を説明しますと、彼は「お父さんが亡くなった月なんだね。寂しくなったね。」と言ってくれました。しかし、その言葉の奥にほんの少し距離感を感じました。それは私が彼の言葉から「もう3年も経とうとしているのだから、そろそろ気持ちを切り替えないといけないよ。いつまでもくよくよしていたら、よくないよ。」という心を感じ取ったからではないかと思います。

私たちが暮らしている世間を仏教では堪忍土といいますから、涙をこらえ、寂しさをこらえ、堪え忍ばねば生きていけない世界ではありますが、大事な人を失った寂しさや悲しさをいつまでも抱え続けるのが凡夫の素直な「情」というものではないでしょうか。

浄土真宗が大事にしている仏さまを阿弥陀仏(あみだぶつ)と申します。阿弥陀仏は、そのような凡夫の情をすべて知ってくださった上で、しっかりしたら救うよといった条件を私たちに一切お付けにならず、「そのまま、たすける」と、そのままの私を抱きとってくださる仏さまです。

道綽禅師(どうしゃくぜんじ)は、「凡夫の情を抱えたまま、阿弥陀さまの救いにおまかせしなさい。私たち凡夫が救われる唯一の道ですよ」とお示しくださっています。      称名

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